遺産分割協議のその後
諸問題
Q
.父の死亡後、相続人である兄弟3名で遺産分割協議を行ったところ、父の死亡後4年が経過してようやく成立しました。 遺産に賃貸物件があり、結局長男が同物件を取得することになりました。この場合、父が死亡してから遺産分割が成立するまでの間に支払われた家賃も、長男が全て取得することになるのでしょうか。
A
A
賃貸物件における賃料や株式の利益配当、預金の利息のように、物の使用の対価として生じる収益を「法定果実」といいます。これらは遺産そのものでは無いので、通常は遺産分割の対象とはなりません(実務上は、相続人全員の同意があれば遺産分割の対象として取り扱うこともあります)。
この問題について、最高裁平成17年9月8日判決は、「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである」と判示しました。
Qのケースだと、長男が賃貸物件を取得した場合、賃貸物件は相続開始時(お父様の死亡時)に遡って長男が所有していたことになります(民法909条本文)。しかし、遺産分割成立までの間に発生した賃料債権は、遺産とは別に相続人3名が相続分に応じて単独で取得することになります。
したがって、相続開始時から遺産分割成立時までの間に支払われた家賃については、各相続人で1/3ずつ分割することになります。
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