遺産分割協議のその後
諸問題
Q
.父が死亡し、遺産分割協議の結果、私が不動産を相続することになりました。登録免許税がもったいないので、名義は父のままにしておきたいのですが、問題はありますか?
A
A
現時点(20 20年3月10日)では違法ではありませんが、相続登記が義務化される見込みです。また、将来の紛争防止のため、速やかに登記名義変更手続をとることが望ましいです。
遺産分割協議成立後も、登記名義を被相続人のままにしておく例は多くありますが、数年来、所有者が誰か分からない土地、数次相続が発生した結果、相続人が多数いて、協議がまとまらず所有者が確定しない土地が多いという問題が指摘されていました。
そこで、相続時の登記を義務付ける法改正が行われる予定になっています。詳細は未確定ですが、改正骨子は、以下のとおりです。
①相続による取得から3年以内に登記申請しなければならない。違反した場合、10万円以下の過料を科す。
②相続開始から10年間、登記未了の場合、法定相続分どおりに分割したものとして扱う。
③住所・氏名を変更した場合、2年以内に登記変更を申請しなければならない。違反した場合、5万円以下の過料を科す。
過料の対象は、改正法施行後に相続が発生した事案に限られますが、せっかく遺産分割協議が成立したにもかかわらず、②の手続によって、これと異なる登記がされてしまう可能性があります。
また、父親名義のままにしていた場合、他の共同相続人が、遺産分割協議に反してその法定相続分を第三者に売却したり、他の共同相続人の債権者が、その法定相続分を差し押さえしたりする可能性があります。遺産分割が成立したにも関わらず、登記手続をとっていなかった場合、これらの第三者に対し、あなたが単独で不動産を取得したことを主張することはできません。
あなた自身が不動産を売却したり担保権を設定したりしたいと思ったときも、遺産分割どおりの相続登記をしていない状態では、これらの処分行為ができないことがほとんどです。
さらに、あなたが亡くなった後に、遺産分割協議書の所在が分からなくなったり遺産分割の事情を知る人がいなくなったりして、あなたが所有者であることが分からなくなり、あなたの相続人が再度所有権確定の争いに巻き込まれる可能性もあります。
将来の紛争防止のため、遺産分割成立後は、速やかに登記名義変更の手続をとりましょう。
*)2021年3月10日時点の情報に基づきます。
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