相続が発生したとき​

遺産にまつわるお悩み​

Q

.先日、母親が死亡しましたが、生前に知人の保証人になっていたと聞いたことがあります。 私は母親の保証債務も相続するのでしょうか。

A

A

マイナスの遺産(負債)も相続の対象となりますので、原則として保証債務も相続されることになります。

しかしながら、保証債務の内容によっては被相続人の一身に専属するものと理解され、相続性が否定されることがあります。

 

1 身元保証

労働契約における「身元保証契約」とは、被用者が使用者に損害を与えてしまった場合、身元保証人がその賠償について保証する契約をいいます。

身元保証契約は、通常は保証人と本人との間の個人的な信頼関係を基礎として成立することが多く、一身専属性を有すると解されますので、原則として相続の対象とはならないとされています。

しかし、使用者から本人に対する具体的な損害賠償請求権が発生した後に身元保証人が死亡した場合は、既に具体的な金銭債務が発生していますので、通常の保証と同様に相続の対象となります。

 

2 信用保証(根保証、継続的取引から生じる債務の包括的保証など)

継続的取引によって将来的に負担し得る債務について、責任の限度額や期間を定めずに保証をした場合、保証人の責任の範囲が極めて広範となります。そのため、特段の事由の無い限り、連帯保証人の死亡後に生じた主債務は、相続人において保証債務を承継することは無いと解されていました(最高裁昭和37年11月9日判決)。

これを踏まえ、令和2年4月の民法改正により、①個人根保証契約の場合、極度額を定めなければ保証契約が無効となること(民法465条の2第2項)に加え、②主たる債務者又は保証人が死亡した場合が元本確定事由と定められました(民法465条の4第1項3号)。

そのため、保証人が死亡した場合はその時点で保証債務の金額が確定し、その後に生じた債務に関して保証人の相続人が責任を負わないことが明確にルール化されています(なお、改正民法は令和2年4月1日以降に締結された保証契約に適用されます)。

 

3 まとめ

保証債務は本人が知らないうちに増大していることも多く、相続となるとなおさら対応に苦慮することもあるかと思います。もっとも、保証の内容次第では相続性を否定できる場合もありますし、法改正により相続人の責任の範囲が限定される場合もあります。

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