相続が発生したとき
遺産分割コラム
Q
.私は株式会社を経営しており、発行済株式1000株を、私が500株、妻が400株、長女が100株持っています。私の推定相続人は、妻、長女、長男です。 妻は自分の株式を長男に相続させるつもりのようですが、長男は素行が悪いため、私は長女に会社を継がせたいと考えており、また、長男を会社に関わらせたくありません。何か方法はないでしょうか。
A
A
定款に、譲渡制限株式を相続した者に対する株式売渡請求の定めを置いてたうえ、配偶者の死亡時に株式売渡請求をするといいでしょう。
ただし、相談者が死亡した場合にも株式売渡請求の対象になりますので、相談者の株式については、あらかじめ、長女に譲渡しておくべき点に注意してください。
1.会社にとって好ましくない者が株主になることを防ぐため、売却や贈与といった株式の譲渡(特定承継)にあたっては、会社の承認を要する旨を定款に定めることができます。このような制限がついた株式を、譲渡制限株式といいます。
これに対し、相続や遺贈といった包括承継は、譲渡制限の対象になりません。しかし、会社にとっては、会社にとって好ましくない者が株主となることを防ぐという要請は、譲渡の場合でも相続・遺贈等の場合でも変わりません。
2.そこで、譲渡制限株式については、相続等が発生した場合、会社が相続人等に対し株式の売渡を請求できる旨を定款に定めることができます(会社法第174条)。このような定めを置くことにより、会社は、仮に相続人等が同意しなかったとしても、その株式を買い取ることができます。
相続人等への株式売渡請求を行うには、株主総会の特別決議が必要です(会社法第309条2項3号・第175条1項)。また、会社が、相続等があったことを知った日から1年以内にしなければなりません。
3.買取価格は、会社と相続人等による協議か、裁判所に対する価格決定の申立手続によって定められます。価格決定の申立ては、協議を経ずに行うこともできますが、会社の株式売渡請求から20日以内にしなければなりません。
期限内に価格決定の申立てがなく、協議が整わない場合、会社の株式売渡請求は効力を失いますので、注意が必要です。
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