遺産分割協議のその後
遺産分割協議後に新たな問題が発生した場合
Q
.母が亡くなり、共同相続人長女、長男、次男で遺産分割協議を行いました。しかし、その後、長女が取得した財産に瑕疵があることが判明しました。長男、次男が取得した財産には何ら問題はないようですが、長女は、長男、次男に対する何らかの請求や遺産分割協議のやり直しをすることはできないでしょうか?
A
A
長男、次男の同意があれば、遺産分割協議を解除したうえで新たな遺産分割協議を成立させることが可能です。また、長女は、長男、次男に対し、代金減額や損害賠償請求をすることも考えられます。
(1)遺産分割の合意解除について
遺産分割協議の合意解除について、判例は、「共同相続人の全員が、既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議をすることは、法律上、当然には妨げられるものではない」(最一小判平成2年9月27日民集第44巻6号995頁)という立場をとっています。
本件では、長男、次男が両者とも同意した場合には、現状の遺産分割協議を解除したうえで改めて遺産分割協議を成立させることが可能です。しかし、どちらか一方でも反対すれば、遺産分割協議は現状のままということになります。
(2)担保責任について
民法911条は、「各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う」と定めています。担保責任の適用の結果、解除、代金減額、損害賠償が問題となりますが、解除については見解が分かれており否定的な見解が一般的とされています。代金減額で処理されるのは、金銭支払いによる代償分割の場合で、そのほかの場合には損害賠償で処理されます。
さらに、担保責任には期間制限があり、種類又は品質に関して不適合がある場合には、これを知ったときから1年以内の通知が必要となります(民法566条)。
本件では、遺産分割協議において代償分割をした場合には、長女は長男、次男に対し代金減額としてすでに支払った金額を返還するよう請求できます。代償分割によらない場合には、長女は、長男、次男に対し、具体的相続分に応じて損害賠償請求をすることができます。なお、これらの請求は、長女が財産に瑕疵があることを知ったときから1年以内に長男、次男へ通知して行う必要があります。
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