遺産分割協議のその後​

遺産分割協議後に新たな問題が発生した場合

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.父が亡くなり、共同相続人長女、長男、次男で遺産分割協議を行いました。ところが、最近になって、長女、長男、次男のほかに死後認知により相続人となったAさんという人がいることが判明しました。すでに行った遺産分割協議の効力はどうなりますか?

A

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死後認知が、遺産分割協議の成立前か成立後かにより、効力が異なります。

(1)死後認知について

嫡出でない子について、父が認知せずに死亡した場合でも、死亡後3年以内であれば、子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人が、認知の訴えを提起することができます(死後認知、民法787条)。これにより認知が認められた場合には、認知は出生時にさかのぼってその効力が生じるため(民法784条本文)、当該嫡出でない子についても相続開始時に相続人であったことになります。

(2)死後認知が遺産分割協議の成立前の場合

遺産分割協議は、相続人全員の合意により行わなければならず、一部の相続人を除外して行った場合は無効となります。

本件では、遺産分割協議成立前の時点で、すでにAさんは相続人の地位を有しているため、Aさんを除外して行った遺産分割協議は無効となります。

このような問題が生じないためにも、遺産分割協議の前に、被相続人の出生から死亡までの身分関係の変動を網羅できる戸籍謄本を収集し、相続人を正確に把握することが重要となります。

(3)死後認知が遺産分割協議の成立後の場合

認知の遡及効は、第三者が取得した権利を害することができない(民法784条ただし書)こととなっています。そのため、遺産分割協議成立後に死後認知により相続人となった者は、遺産分割協議の無効を主張することはできません。もっとも、遺産分割協議成立後に認知により相続人となった者は、他の共同相続人に対し相続分に応じた価額の請求を請求することができます(民法910条)。この際、計算の基礎となる遺産の価額は、分割の対象とされた積極財産のみとするのが判例の立場です(最三小判令和元年8年27日民集第73巻3号374頁)。

本件では、すでに長女、長男、次男間で成立した遺産分割協議は有効です。しかし、長女、長男、次男は、Aさんから、分割の対象とされた積極財産を計算の基礎としてAさんの相続分に応じた価額を請求される可能性があります。

 

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