相続に備える
遺言書の作成
Q
.生命保険の死亡保険金についても、遺言で誰が受け取るか決めておくことができますか。
A
A 遺言でも、保険金の受取人を変更する意思表示を行うことができます(東京高裁平成10年3月25日判決)。
保険金の受取人変更は、保険契約者の一方的意思表示によってすることができるとされているところ(最高裁昭和62年10月29日判決)、保険契約者が生前に遺した遺言によっても、その意思表示は「外部から明確に確認できる」ことから、保険契約者が死亡した時には、遺言により保険金の受取人変更の効力が生じることになります。
かつて、保険会社の実務においては、遺言による保険契約者の変更が否定され保険会社に対する意思表示(保険会社の手続をとること等)が求められていましたが、上記平成10年東京高裁判決が出てからは、遺言による保険金の受取人変更を認める実務に変更されていると見られます。
もっとも、遺言により保険金の受取人を変更する場合には、大きく2つの注意点があります。
1つめは、保険金を「あげる(遺贈する)」とか「相続させる」とかいう文言では、保険金の受取人変更としての効力が生じない可能性が高いということです。保険金請求権は、保険金受取人の固有財産とされており、保険契約者の死亡により保険契約者の遺産ないし相続財産から離脱して、指定されていた保険金受取人に帰属してしまうのです。このため、保険契約者の意思により、「あげる(遺贈する)」とか「相続させる」とかいった処分をすることはできないとされています(最高裁昭和40年2月2日判決)。
このため、遺言に記載する場合には、あくまで保険金の「受取人変更」という形で明確に記載しておく必要があります。
2つめは、遺言により保険金の受取人変更をしたとしても、保険会社に通知をするまでは、保険会社との関係で変更を対抗できないということです(上記平成10年東京高判)。つまり、保険会社が、遺言による受取人変更があったことを知らずに従前保険金受取人として指定されていた人に保険金を支払ってしまった場合には、保険会社からの保険金の支払いを受けられないことになります。
このため、遺言者の死後、遺言による保険金の受取人変更があることが判明した場合には、迅速に保険会社への通知をすべきでしょう。
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